【特集】第75回富士登山競走
〈山頂コース〉吉住(富士吉田)女子4連覇 大阪から移住、圧巻の走り
笑顔がはじけた。山頂コース女子で4連覇を果たした富士吉田市の吉住友里(36)は、「地元勢としての優勝は格別。支えてくれた人たちに恩返しできた」と喜んだ。
2019年秋、「山(の競技の世界)でプロになりたい」と、大阪府から、豊かな自然に囲まれた富士吉田市に移住。現在は同市に本社を置くミネラルウオーター製造販売の企業「富士山の銘水」所属のプロランナーとして活躍し、富士山や南アルプスの山々などで研鑽(けんさん)を積んでいる。
地元勢として初めて臨んだ登山競走。苦手のロードを耐えて乗り切ると、馬返し以降の山岳地で一気にスピードアップした。
優勝タイムは3時間15分12秒。「サブスリー(3時間を切るタイム)を狙ったんだけど…」としつつも、2位に19分近い差を付ける圧巻の走りでゴールテープを切った。
9月以降はイタリアやタイで開かれるトレイルランやスカイランの世界大会に出場予定。「日本代表として、優勝を目指したい」と、世界の頂を見据えた。
〈女子〉
(1)吉住 友里(富士吉田)3.15.12
(2)楠田 涼葉(大阪)3.34.05
(3)上田 絢加(東京)3.34.56
(4)相原 千尋(香川)3.36.55
(5)広瀬 光子(東京)3.42.03
(6)木下 久美(大阪)3.48.58
(7)藤本 麻里(甲斐)4.00.16
(8)加藤 揚子(群馬)4.01.12
(9)狩野 幸子(群馬)4.01.26
(10)すみるのば あでりな(神奈川)4.01.40
〈山頂コース〉男子は甲斐(千葉)初優勝 難コース攻略、記録は不満
山頂コース男子で初優勝した甲斐大貴(27)は、「優勝はうれしい。でもタイム的には悔しい」と自分に厳しかった。
山岳や超高層ビルを駆け抜ける「スカイランニング」の日本協会・特別強化指定選手。協会の推薦で初出場した。得意のロードで逃げ切る作戦だったが、暑さもあって思うようにスピードが上がらず、3合目付近まで3番手で進めた。徐々にリズムを取り戻し、先頭に立つと、迫り来る後続を振り切り、「自分のオリジナル」という3本指のポーズでゴールテープを切った。
「標高3千メートルを超えると手がしびれだし、最後はうまく着地もできず、厳しいコースだった」と振り返る。次回は今回よりも20分以上早い「2時間27分台」を目標にするといい、「リベンジしたい」と話す。
レースの魅力を発信しようと頭にカメラを装着し、動画を撮影しながら走っている。最速ランナーの目線となった今大会の映像も近く配信する。「お楽しみに」と笑みを見せた。
〈男子〉
(1)甲斐 大貴(千葉)2.51.50
(2)村田 稔明(静岡)2.53.26
(3)江本 英卓(東京)2.55.11
(4)薬師寺裕人(愛媛)2.57.11
(5)宮川 朋史(福井)2.58.51
(6)牛田 美樹(群馬)3.04.25
(7)堀江 智史(埼玉)3.05.05
(8)後藤 憲仁(神奈川)3.06.13
(9)竹村 直太(兵庫)3.07.28
(10)小幡 利春(新潟)3.09.20
〈5合目コース〉男子・加藤(富士吉田)力走“銅” 市民ランナー「全力」
5合目コース男子は富士吉田市の加藤淳一(42)が3位に入賞。「市民ランナーとしては上出来」と全力を出し切った自分を褒め称えた。
序盤は苦しい展開を強いられた。ロード区間は首位でレースを優位に進めようとしたが、途中で脚がつるアクシデント。「周りのペースが速く、引っ張られてしまった。どこにリズムを置くのか分からなくなってしまった」と振り返る。
冬場は2026年の冬季五輪の新種目として採用された、山岳スキーの選手として活動。山道に入り他選手がペースを落とす中、「山道では抜かれない自信があった」と、ライバルを横目に徐々に順位を上げた。「ロード区間でもう少し前にいれば最後に勝負ができたイメージがあった」とレース後は“銅メダル”に終わった悔しさをにじませた。
山岳スキーのトレーニングの一環で参加した登山競走。「これからも市民ランナーとして楽しく走りたい」と語った。
一生懸命に走った 男子優勝の斎藤拓也
前回大会よりも速いペースで走れたと思う。暑さは気にならなかったが、石の上は滑るので転ばないように気を付けた。前回大会は優勝し、この3年間で自分がどのくらい成長したのか考えながら走っていた。途中で歩くことも無く、気持ちを切らさずに一生懸命走ることができた。
〈男子〉
(1)斎藤 拓也(東京)1.21.40
(2)山口 純平(東京)1.26.28
(3)加藤 淳一(富士吉田)1.29.14
(4)上田 誠人(忍野)1.31.10
(5)清水 琢馬(群馬)1.31.47
(6)風間 健範(東京)1.32.41
(7)野永 健宏(東京)1.33.02
(8)長尾 暁人(神奈川)1.33.23
(9)谷口 友章(岡山)1.35.11
(10)金子 隼也(埼玉)1.36.30
〈5合目コース〉女子・初参加 福田(富士河口湖)3位 ペース崩さず「山」で勝負
「終盤からゴールをイメージしていた。開放感がある」。5合目コース女子で3位となった富士河口湖町の福田恵里佳(36)は、気持ちよさそうに汗をぬぐった。
普段はトレイルランナーとして山々を駆け巡っている。「富士山の近くに住んでおり、練習環境にも恵まれているので挑戦しようと思った」と初めて参加した。
「いつもは山を走っているため、ロード区間はきつかった。他の選手についていこうとせず、自分のペースを守り切った」とマイペースを刻み、“本業”である山道に入ってから勝負に出た。「山に入り調子が上がってきて、抜きにいった」と、一人、また一人と追い越していった。
次なる目標は9、10月のトレイルランの大会で自身の目標タイムをクリアすること。「バスは使わず、今から走って下山します」。ゴールテープを切ったのもつかの間、新たな目標に向けスタートを切った。
「山頂」に挑みたい 女子優勝の好士理恵子
市民ランナーとしてフルマラソンの経験があり、富士登山競走への出場は初めて。優勝できてうれしい。2合目付近で足がけいれんを起こしてしまったけれど、富士山の自然の中を駆け抜けるレースは気持ちよく、頑張って走りきることができた。来年は山頂コースに出場してみたい。
〈女子〉
(1)好士理恵子(東京)1.44.52
(2)田中 礼美(神奈川)1.46.44
(3)福田恵里佳(富士河口湖)1.47.32
(4)野永 美咲(東京)1.47.41
(5)綾部しのぶ(神奈川)1.48.57
(6)黒沢 夏楠(茨城)1.51.36
(7)真鍋 朋子(大阪)2.01.26
(8)山口 典子(長野)2.02.00
(9)福本しのぶ(大阪)2.10.03
(10)松本 莉奈(東京)2.10.14
“鉄人”が引退レース
開会式では、山頂コース7連覇を含む史上最多の10勝を誇り、今大会で引退する芹沢雄二さん(60)=山口県=が選手宣誓を務めた。「日頃鍛えた体力気力を尽くし、正々堂々、富士山頂を目指し、駆け上ることを誓う」と力強く述べた。
40回目の出場となる今大会は、5合目の関門で制限時間を超え、無念のリタイア。「平地の暑さが影響した。余力があっただけに残念」と振り返る。それでも「19歳から出場し、人生の3分2を費やした大会。引退は、ほっとした気持ちとさみしさが入り交じっている。来年は応援者として観戦したい」と語った。
感染対策を徹底
大会は、新型コロナウイルス感染対策を徹底して行った。
選手は、当日に検温と健康チェックを行い、配布されたリストバンドを着用してから入場。レース中の給水はペットボトルでの配布か、マイボトルやマイカップで給水ボトルから自分で注ぐようにした。