「つばくろ東沢」決定 富士山下山道
山開きまでに改修
国と山梨県でつくっている富士山安全登山対策委員会は24日、東京・九段会館で開いた第3回会議で、今夏の富士山下山道は、これまで使用していた砂走りルートに代え、つばくろ東沢ルートとすることを決めた。
砂走り下山道は昨年8月、落石により死者12人、重軽傷者31人の犠牲者を出した。下山道としては危険なため、山梨県と国土庁が中心になって委員会を設置して安全な下山ルートを検討していた。新下山道のつばくろ東沢は吉田口登山道の東側にあり、これまで山小屋に物資を運ぶブルドーザーが利用していて、落石の危険はほとんどない。県は、このブルドーザー道を7月1日の山開きまでに改修して下山道として整備した後、砂走りへの立ち入りを禁止する。新ルートは砂走りに比べると下山に1-2時間多くかかる。
この日の会議では(1)富士山指導センターの建設(2)登山道の一部変更(3)富士山の崩落対策を進める(4)安全登山の教育啓もう―を決めた。県は56年度当初予算案に1億5535万円の富士山安全対策費を計上しており、安全指導センターは6合目の雲海荘付近に約89平方メートルの建物をつくり、仮眠室、救護室、警察官詰め所などを設けて、7、8月に登山指導、山岳パトロール、気象情報の徹底などに当たる。
つばくろ東沢ルートの下山道は雪解けを待って測量する。また、登山道のうち穴小屋から花小屋までの間が久須志岳直下のため、ルートの一部変更や土どめ工事をする。久須志岳を中心とした崩落危険地帯は、6月から11月までに700万円かけて測量や浮き石調査を行い、安全対策を進める。
望月知事は24日の記者会見で「つばくろ東沢の新下山道は県道ではない」と語った。「南アルプスなどには無数の登山道があるが、県道ではない」ともいい、富士山の新下山道も、こうした登山道と同じに扱おうという考えである。
これまでの下山道、砂走りは長年にわたり、登山者が通って下山道となったものである。新下山道のつばくろ東沢は、県が整備費を出すため、公道という受け取り方出てきそうだが、知事は万一事故が発生した場合の賠償問題を考慮しての発言のようだ。 【当時の紙面から】
(1981年2月25日付 山梨日日新聞掲載)