2024.12.22

富士下山道にシェルター 県、最短7年で13基整備 通行料活用

 山梨県は19日、富士山吉田口下山道に、突発的な噴火による噴石や落雷から登山者を守るシェルター13基を整備する方針を明らかにした。来年度から2基ずつ設置する計画で、最短7年間で全13基の設置が完了する見込み。財源には登山者から徴収する通行料を活用する。
 県富士山保全・観光エコシステム推進グループによると、シェルターはコンクリート製で中央が空洞の直方体。1基で最大135人が避難できる。出入り口となる1面が開放されていて、緊急時に出入りしやすいように扉はない。景観に配慮し、下山道がつづら折りとなっている8~7合目では尾根部分の斜面にはめ込んで設置する予定。
 2023年度の県試算では1基当たりの設置費用は1億円程度だったが、本年度行った測量調査の結果、試算より抑えられる見込み。起債を活用し、登山規制の通行料収入を充てる。
 設置工事ができるのは閉山後から降雪前までの短期間に限られるため、来年度に2カ所の設置を試行的に実施し、進捗を踏まえてより詳細な設置計画を立てる方針。
 下山道の8~6合目には、緊急避難できる場所が7合目の緊急避難小屋1カ所、洞門3カ所にとどまる。死者・行方不明者63人の被害が出た14年の御嶽山(長野、岐阜県)のような突発的な噴火が起きた場合、噴石から身を守る場所が少なく、緊急避難場所の確保が課題だった。
 世界文化遺産の構成資産などで事業をする場合、世界遺産としての普遍的価値に与える影響を評価する必要がある。
 シェルター設置に向けては、山梨、静岡両県などでつくる富士山世界文化遺産協議会が定めた遺産影響評価の手続きなどを経て、設置工事が進められるという。同グループの担当者は「安全登山の確保のため、なるべく早く設置していきたい」としている。

(2024年12月20日付 山梨日日新聞掲載)

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