御師の家カフェに再生 富士河口湖 元県職員「文化に触れる場に」
元県職員のトンプソン智子さん(58)=甲府市=は、富士河口湖町河口にある、富士登山者の世話をした河口御師の家を改装し、カフェやワーキングスペースを併設した「古民家なかむら」の運営を始めた。約10年前から空き家となっていたが、所有者と対話を重ねて活用策を見いだした。外国人観光客らに地域の文化に触れてもらう場所にしていきたい考えだ。
トンプソンさんは広報やマーケティングなどを手がける会社を経営する傍ら、2020年に県の広報担当者に起用されて来県。21年に空き家となっていた河口御師の集落にある古民家の活用について所有者の親族から相談を受け、古民家を改修した宿泊施設を運営している事業者を紹介したが、話はまとまらなかったという。
昨年県を退職した後、空き家の所有者と話すと「生まれ育った建物。他人を泊める宿泊施設にするのは抵抗がある」と打ち明けられた。「持ち主の思いに寄り添いながら活用方法を探りたい」と、自らがカフェなどとして運営することを提案。御師の家の雰囲気をできる限り残すこととし、理解を得た。
改修は2月から始め、4月から営業を開始。1階のカフェは畳をそのまま使い、座卓と座布団を置いた。御師料理を参考に、地元食材を使った「おもてなしお重」を提供する。2階は作業机や電源を備えたワーキングスペースに。観光客向けに地場産品や土産物を扱う売店も併設した。
オープン後、地域住民や河口浅間神社を訪れた観光客らでにぎわっている。周辺の観光スポットや交通手段について英語でも案内しているトンプソンさんは「観光客らに本物の富士山信仰の文化を感じてもらえる場所にしていきたい」と意気込んでいる。
(2024年6月13日付 山梨日日新聞掲載)