2024.1.04

竜神がすむ「富士八海」市川三郷・四尾連湖

森林に囲まれた四尾連湖。右奥は富士山=山日YBSヘリ「ニュースカイ」(NEWSKY)から

 市川三郷町山保の四尾連湖には、四つの尾がつながった「尾崎龍王」という竜神がすむという伝説があり、湖名の由来とされている。
 四尾連湖は蛾ケ岳付近の標高約850メートルに位置し、流入する河川も流出する河川もない山上湖だ。かつては現在の富士五湖などとともに「富士八海」の一つとして数えられた。富士山を信仰の対象とする富士講信者が霊場として、水で身を清めるなどしていたと伝わる。
 市川大門町誌などによると、尾崎龍王は古来より湖にすむ竜神とされる。湖を挟んで蛾ケ岳と向き合う湖畔には、江戸時代の富士講信者が自然石で建てたとされる「尾崎龍王碑」が残るが、書かれた文字の大半が消え、詳しい内容や由来を知る人はいないという。
 竜神伝説との関係をうかがわせる「四尾連」のほか、かつては「神秘麗」「志比礼」の表記も。「神秘麗」は江戸時代の富士講信者が残した記録にあり、1814(文化11)年に幕府へ献上された「甲斐国志」に「志比礼」の記述が残っているという。
 このほか、武者修行中の猟師の兄弟が湖にすむ牛の怪物を弓矢で倒した後、干ばつだった土地に大雨が降り始めたという言い伝えもある。それ以降、干ばつの際には湖で雨乞いが行われるようになったという。
 湖は1959年に県立自然公園に指定され、桜や紅葉など四季折々の風景を楽しめる市川三郷町内屈指の観光地スポット。

(2024年1月1日付 山梨日日新聞掲載)

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