富士山噴火新たな痕跡 山中湖底
■縄文中後期に6回 県科学研調査
山梨県富士山科学研究所は30日、縄文時代の中後期に、富士山の噴火が少なくとも6回あったことが明らかになったと発表した。従来の調査ではこの時期に3回とされていたが、研究所は「火山活動がより活発だったことの表れ」とみている。山中湖底の地層調査で、富士山噴火の火山灰などの堆積物が新たに6層見つかったことから判明した。研究所は今回の研究データを、噴火の頻度や影響の予測に生かすとしている。
研究所によると、3900~5050年前の1150年間の地層に、火山灰や軽石などの「降下火砕物」が積もった六つの層があることを確認。泥や植物プランクトンなどの層に挟まれていた。風の影響で火山灰などが山中湖村、忍野村方面に比較的多く飛散し、堆積した可能性が考えられるという。
静岡県側を含む富士山麓の調査ではこれまで、同時期に3回の噴火があったことが確認されていた。今回明らかになった6回の噴火に、従来の3回が含まれているかは不明。ただ、3回の差があるため、研究所は「(少なくとも3回は)初めて明らかになった噴火履歴」とみている。
今回調査した1150年間で噴火が6回発生したとすると、191年に1度程度の周期で発生したことになる。一方で、現在は1707年の宝永噴火から300年以上が経過。研究所は「時代によって噴火の間隔が違う。今後、かつての時代かそれ以上の頻度で、噴火を繰り返す恐れもある」と指摘する。
調査は2016年度ごろから、東京大の研究機関と共同で実施。噴火履歴の分析としては初めて、山中湖の湖底堆積物を使った。この湖底堆積物は1998年に県が採取して以降、研究所が保管。近年になって年代測定などの技術が上がり、堆積物に含まれる降下火砕物の詳細を調べられるようになった。さらに、20年度に湖畔でも堆積物を採取し、分析の参考にした。
(2023年7月1日付 山梨日日新聞掲載)