富士登山客回復に期待 遺産登録10年の山開き
■前夜祭で安全を祈願
富士山の吉田口登山道が7月1日に山開きするのを前に、山小屋関係者が30日、登山客受け入れの準備を進めた。新型コロナウイルス感染症の5類移行、富士山の世界文化遺産登録10年の節目で登山者の増加が見込まれ、関係者は客足の回復に期待を寄せる。富士北麓の富士吉田市内では開山前夜祭が行われ、夏山登山の安全を祈願した。
8合目の山小屋「太子館」は30日、寝具の清掃や食料物資の搬入など登山客を迎える準備を進めた。予約は5月の時点で満室となる日が出るなど好調。スタッフの井上義景さん(43)は「7月上旬の予約も増えている。山小屋に活気が戻ってくるだろう」と顔をほころばせた。食事をする広間に設置していた仕切り板を撤去し、入館時の検温やマスクの着用要請もなくした。一方、コロナ禍前の約6割とした定員数は宿泊客の快適性を重視して継続した。
登山客数の回復とともに危惧するのは弾丸登山の増加。「多くの山小屋が定員を絞っている。県や市も注意を呼びかけているが、しっかりと山小屋を予約し、休息を取ってもらいたい」と話した。
5合目は30日、曇りで風速10メートルを超える風に見舞われ、観光客の姿はまばらだった。ただ、富士山5合目観光協会によると、山開き前日の客足はほぼコロナ禍前並みの例年通りだったという。小佐野昇一会長は「コロナに関する行動制限が緩和され、初めて迎える夏山シーズン。期待は大きい」と話した。
富士吉田市の北口本宮冨士浅間神社では開山前夜祭が行われた。富士講信者や市関係者らが市内を練り歩いた。神社で安全祈願の祭事を行い、お道開きの儀式をした。
北口本宮冨士浅間神社に向かって歩く富士講信者=富士吉田市上吉田
(2023年7月1日付 山梨日日新聞掲載)