富士山「環境負荷抑制を」
富士吉田でシンポジウム
富士山の保全や観光について話し合うシンポジウム「明日の富士山を考える」(県主催、富士吉田市共催)が16日、富士吉田市のふじさんホールで開かれた。地元関係者や専門家によるパネルディスカッションが行われ、富士山の観光客の増加に伴う環境負荷への低減や観光地としての在り方について、それぞれが持論を展開。来訪者のマナー向上や噴火対策の強化を求める声が上がった。
県が富士山の現状と課題について、地元と意見交換するために企画。冒頭、県の担当者が富士山を巡る現在の課題として、来訪者数が多すぎることや排ガスなどの環境問題、人工的な景観が目立つことを指摘。来訪者数をコントロールする必要性を指摘した。
パネルディスカッションには、環境優良車普及機構の岩村敬会長、富士山5合目観光協会の小佐野昇一会長、上智大大学院の織朱實教授、富士山科学研究所の藤井敏嗣所長、富士吉田市の堀内茂市長、東京大大学院の山本清龍准教授が登壇。NPO法人富士山国民会議の小田全宏運営委員長がコーディネーターを務め、それぞれ富士山の課題について意見を述べた。
岩村会長は「個人旅行の観光客は高いレベルの観光地を望む」として、観光地としての価値向上に向けた取り組みを要望。小佐野会長は外国人観光客の増加に伴いごみが増加しているとして「富士山のルールやマナーを周知する必要がある」と訴えた。
堀内市長は富士山に電気を通す必要性を訴え、「現在の自家発電から切り替えられる。災害防災の観点からも必要だ」と指摘。県が検討している富士山登山鉄道を念頭に「鉄道は大規模な工事になる。これ以上、自然を壊してほしくない」と語った。
藤井所長も富士山噴火に備える防災の観点から電源確保の重要性を語った。織教授は世界文化遺産としての価値を地元住民が改めて認識する必要性を強調し、山本准教授は景観を守ることの大切さを指摘した。
(2022年11月17日付 山梨日日新聞掲載)