秋の登山 遭難倍増
早い日没、気温低下…準備不足目立つ
秋山期間に入り山梨県内で山岳遭難が増加している。9月以降に発生した遭難件数(暫定値)は10月24日現在で46件。前年同期の約2倍になっている。新型コロナウイルス対策の行動制限がなく登山者が増えていることが要因とみられ、道迷いや滑落で救助を要請する登山者が相次ぐ。山岳関係者は「秋は夏と比べて日没が早く、気温の急激な低下などから遭難リスクが高まる」と指摘。紅葉やキノコ狩りが最盛期を迎えることから、県警は万全の準備を行うよう注意を呼びかけている。
10月9日、大月市の滝子山で道に迷った埼玉県の男女が救助された。2人は日没で下山できなくなったことから救助を要請。ヘッドライトなどの照明器具は携帯していなかった。県内では10月以降、登山者が道に迷い、日没で行動不能になるケースや、下山中に疲労などから転倒する事故が相次いでいる。
県警によると、秋山期間に入った9月1日から10月24日までの県内の遭難件数は46件で、前年同期(22件)の2.1倍に増加。死者は2人増の5人になっている。
1~9月の山岳遭難は108件119人で、件数は前年同期(75件85人)の1.4倍。2年前の同期(55件59人)の2.0倍。今年は新型コロナ感染拡大防止の行動制限がない期間が長いことが影響しているとみられ、県警は「コロナ禍前と同水準に戻りつつある」としている。
山系では八ケ岳・秩父が最多の31件、南アルプスが28件、大菩薩・道志が23件、富士・御坂が16件などと続く。年代別では30代以下が26人、40~50代が43人、60歳以上が50人となり、中高年が多数を占めた。
県山岳連盟によると、11月にかけては紅葉目的で瑞牆山や日向山、大菩薩嶺などへの登山者が増加するという。連盟顧問の古屋寿隆さんは「山において9月と10月以降の天候は全く異なる」と指摘。秋は日没時間が急激に早まるため、行動できる時間が短くなるほか、天候が急変するなどして低体温症となるリスクが高まるという。
滑落や転倒で救助要請する登山者の多くが下山中であるといい、「疲労で足元がおぼつかなくなったり、帰りの交通機関の時間に間に合わせるために焦ってけがをしたりするケースが多い」と強調。レベルにあった山の選定や、余裕を持った行動計画の作成、照明器具や防寒具、雨具などの備えの必要性を訴える。
本格的な秋の行楽シーズンを迎えていることから、県警は「今年は準備不足とみられる遭難が目立っている。慎重な行動に努め、安易な登山は慎むようにしてほしい」と呼びかけている。
(2022年10月29日付 山梨日日新聞掲載)