「富士山の名所」各地に
展望デッキ県内で整備相次ぐ 知名度アップ知恵絞る
山梨県内で富士山の眺望を楽しめる展望デッキの整備が相次いでいる。五重塔と富士山の組み合わせが人気となり、国内外から年間約50万人が訪れるようになった富士吉田・新倉山浅間公園が知られていたが、笛吹市と忍野村が昨年から今年9月にかけて新たに整備。「知る人ぞ知る名所」(担当者)にとどまっていた富士山の展望地を、新たな誘客スポットにすることを目指す。全国旅行支援が始まり旅行の機運が高まる中、写真コンテストの実施やPR動画の発信などで知名度アップに知恵を絞る。
「こんなに素晴らしい絶景だとは思わなかった」。11日、笛吹市芦川町の新道峠にある「FUJIYAMAツインテラス」では、来訪者が富士山と眼下に広がる河口湖や山中湖の景色に歓声を上げ、しきりにカメラのシャッターを切っていた。
標高約1600メートルの新道峠は、富士北麓を一望する眺望が写真愛好家を中心に人気だったが、笛吹市は昨年7月、さらに多くの人を呼び込もうと展望デッキを整備した。駐車場から徒歩約50分かかるため、送迎バスを用意。今年4月25日から6月27日までに6559人がバスを利用した。地元の芦川町観光協会は「展望デッキのオープンで、芦川地域を訪れる観光客は急増した」と効果を実感する。
県内の展望デッキを巡っては、これまで富士吉田市の新倉山浅間公園の知名度が高かった。交流サイト(SNS)や海外雑誌に掲載されて外国人の注目を集め、新型コロナウイルス禍前の2019年度は過去最多の年間53万7899人が来訪。富士山と五重塔(忠霊塔)の共演が人気で、昨年度はデッキの広さを5倍に拡張した。コロナ禍の22年度も9月末現在で17万606人が訪れている。
これに対し、「気象条件で変わる青空と富士山のコントラストは唯一無二の景色」とうたい、忍野村も今年9月13日、村内の二十曲峠の標高約1150メートル地点に「二十曲峠展望テラス~SORA no IRO~」をオープンした。忍野八海と並ぶ新たな観光拠点に位置付ける考えで、村担当者は「村内に長時間滞在してもらうためには、忍野八海と展望テラス以外の観光スポットも発信していく必要がある」と説明する。
富士吉田市の後から展望デッキを売り出す笛吹市や忍野村は、PRに躍起だ。忍野村は村内の渓流など名所をPRするプロモーション動画を5種類制作し、動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開。富士山を背景にした四季折々の景色やドローンの空撮、渓流の水中映像を織り交ぜ、豊かな自然を前面に出す。今後は展望テラス付近に公園の整備も計画している。
全国旅行支援が始まり遠出の機運が高まる中、笛吹市も新道峠からの風景をテーマにした写真コンテストを11月から始める。売店、休憩所の設置も検討中だ。市担当者は「富士山の絶景はどこにも負けないと思っている。コロナが落ち着けばさらに来場者は増えるので市内を巡る仕組みも考えていく」と先を見据える。
(2022年10月19日付 山梨日日新聞掲載)