元Jリーグ選手 コーヒーに情熱
「富士山産の豆」開発に挑戦
富士吉田市下吉田4丁目に、元プロサッカー選手が経営するコーヒー店がある。J2徳島ヴォルティスなどでプレーした安藤寛明さん(36)が店主を務める「&U(アンドユー) coffee」。安藤さんはけがで引退した後、豊かな自然に引かれて富士吉田市に移り住み、こだわりの一杯を追い求める。富士北麓地域でのコーヒー豆の栽培にも乗りだし、「富士山産のコーヒー」の開発という新たな“ゴール”を見据えている。
「&U coffee」は富士山が望める国道139号沿いに面し、店内はコーヒーの豊かな香りが漂う。自家焙煎で、ブレンドはパプアニューギニア産とブラジル産の豆を調合し、酸味が少なくコクが深いのが特徴だ。「日々、コーヒーの奥深さを感じる。理想のコーヒーを作り出したい」と話す。
安藤さんは横浜市出身。184センチの長身とヘディングの強さが武器のディフェンダーとして2009年、神奈川大からJ2徳島ヴォルティスに加入した。リーグ戦の出場機会には恵まれず、3年目に九州の地域リーグのチームに期限付き移籍。JFL昇格に貢献したが、長年悩まされた左膝の故障により、12年夏、プロ生活に区切りをつけた。
コーヒーとの出合いは徳島時代。練習後によく通った喫茶店で提供された、店主こだわりのサイフォン式のコーヒーに魅了された。「いつか自分も」-。そんな思いに駆られた。
引退後は、各地でサッカー教室を開き富士吉田にも訪れた。生徒が集まるようになり、市内でスクールを開設。14年には「豊かな水と自然」に引かれて市内に移住し、子どもや社会人の指導に力を入れてきたが、コーヒーへの熱は冷めなかった。新型コロナウイルス流行を機に勉強を本格化させ、昨年6月の開店にこぎつけた。
完全キャッシュレスとし、不定休で、前日にインスタグラムで営業時間を案内する。店名の「&U」は名前の「安藤」を掛けるとともに、「『あなたも一緒に』。人と人とがつながる場所に」という思いも込められている。オープンから1年が過ぎ、地元客や観光客が訪れるようになってきた。「店を始めて、サッカー関係者だけでなく、いろんな人との交流が生まれた。そのつながりを大切にし続けたい」と話す。
富士北麓地域で育てるコーヒー豆の開発にも取り組み始めた。気温の低さがハードルとなるが、知人の温室栽培の一角を間借りして苗を栽培していく計画だ。「前例がないことをやってみたい。『富士山産コーヒー』ができれば、地域を盛り上げることにもつながる。頑張りたい」。現役時代とはうって変わって、攻めの挑戦を続ける。
(2022年10月4日付 山梨日日新聞掲載)