2022.9.18

富士山麓 平癒願う神事

世界遺産センター 26日まで企画展

 山梨県立富士山世界遺産センター(富士河口湖町船津)は26日まで、企画展「富士の神事芸能と病」を開き、富士山麓に伝わる「御湯花(湯立)」や獅子神楽(獅子舞)などの民俗芸能を取り上げ、信仰の歴史や病気との関わりを紹介している。センター担当者は「コロナ禍の今、病気平癒や悪疫退散の願いを込めた神事や芸能の世界を知ってほしい」と話している。

 山中湖村平野の天神社で4月と9月に行われる「御湯花祭」は、大きな釜で沸かした湯を、参詣者にササで振りかけ無病息災を願う。釜に湯を沸かす儀式「湯立」は、富士北麓では湯立神楽として16世紀末から富士山の神仏に奉納されていた記録が残るが、現在は御湯花祭など数例しか伝わっていないという。

 企画展には、湯立に使われる釜や獅子頭など資料約20点を展示。富士山周辺に今も伝承される湯立や獅子神楽を紹介している。そのうち獅子神楽は、江戸時代に活躍した下吉田村(現富士吉田市下吉田)の大工集団・萱沼氏が、寺社の普請とともに富士山東麓地域(静岡県御殿場市、神奈川県箱根町など)まで伝えたことを記録でたどる。

 現在、御殿場市の沼田や大坂、箱根町の仙石原や宮城野には、獅子頭をかぶった舞手が湯立を行う「湯立神楽」が伝わる。同センター調査研究スタッフの堀内真さんは「下吉田から伝わった獅子神楽と湯立が融合して独自に発展した」と考察。沼田に残る文書などから、転機は1858(安政5)年のコレラの大流行と推定し、「流行病をキツネ憑きと見立て、獅子と湯によってキツネ(疫病)を払うという、より激しい形態に発展したのではないか」と考える。

 山中湖村平野に昭和初期まであった組織「六斎」による病気平癒の祈祷についても解説。堀内さんは「医療や科学が未発達の時代、病の大流行を先人たちはどのように受け止め、乗り越えようとしてきたのか。今こそ感じてほしい」と話している。

 観覧無料。開館時間は午前9時~午後5時(入館は午後4時半まで)。

(2022年9月16日付 山梨日日新聞掲載)

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