富士講支えた伝統守る
富士山を信仰し登山する富士講信者の世話をした御師の家の後継者らが、御師文化を守っていくための一般社団法人「カノエサル」を設立。宿坊を兼ねた御師の家は山梨県富士吉田市内で数軒にまで減少していて、信仰登山や御師文化の衰退に危機感を覚えて発足。世界文化遺産「富士山」の構成資産には御師文化と関わりが深いものも多く「当事者だからできる発信で、御師の歴史や麓から登る登山の魅力を後世に伝えなければならない」と意気込む。
法人によると、富士講の最盛期だった江戸時代後期、上吉田地区には86軒の御師の家があったが、今は建物として残る御師の家は11軒。さらに宿坊の機能を備えているのは4、5軒にまで減った。
御師の家は、信仰のため富士山に登る富士講信者に宿を提供。講は感謝や記念として、おわんなどの用具や神仏像などを奉納した。
7~8年前から学芸員を招くなどして勉強会を開催。民俗学としての御師の文化を学び直した。2021年は御師の家の跡継ぎらでつくる御師団青年部も結成したが、2022年5月、行政とのやりとりなどを担う組織が必要として、一般社団法人を立ち上げた。名前は、富士山誕生の年とされ60年に1度巡ってくる庚申からとった。
法人は、世界文化遺産「富士山」の構成資産には御師住宅も名を連ねるが、浸透していない部分は多いと考えている。今後は、衰退した麓からの富士登山の魅力を発信しながら、御師の家の役割や歴史を伝えていく考え。関係機関と協議しながら、麓からの登山道の整備も進めていく予定。江戸時代から長きにわたって脈々と受け継がれた文化。「100年先も誇れる御師の町にしたい」という。
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