富士噴火対策どうしたら
広域避難計画改定先送り 県方針、山麓住民不安の声
山梨県は24日、山梨、静岡、神奈川3県などが進めている富士山噴火時の広域避難計画の見直しを、来年度中に先送りすると明らかにした。本年度中の改定を目指していたが、高齢者や障害者ら単身での避難が困難な「要配慮者」や、観光客の避難に関する検討が間に合わないため。富士山麓の住民や観光関係者からは「地域の対策を決めることができない。早急に計画を見直してほしい」などと不安の声が上がっている。
山梨県火山防災対策室によると、3県などでつくる「富士山火山防災対策協議会」は昨年9月~今年2月、広域避難計画の改定に向けて大学教授や防災関係者らでつくる検討委員会を計4回開催。一般避難者の避難方法の検討に時間が掛かり、要配慮者や観光客の避難について十分に検討できなかったという。4月以降に検討委員会を複数回開き、来年度中の改定を目指す。
広域避難計画は、協議会が昨年3月に公開した改定版ハザードマップを踏まえて改定する。改定版マップでは県内は都留市までだった従来の想定を超え、新たに大月市と上野原市に溶岩流が到達する恐れがあることが判明。内容を反映させた広域避難計画の見直しが急がれており、地元の住民や観光連盟からは改定先送りに不安の声が上がる。
富士吉田市内の自主防災会の会長は「地域には一人暮らしの要支援者がいて、策定が遅れれば地域の対策を決められない。早急に避難の指針だけでも出してほしい」と訴える。富士河口湖町観光連盟の山下茂代表理事は「観光客の安全のためにも、少しでも早く策定してもらうことが必要だ。観光客の効果的な避難検討について熟議してほしい」と話した。
一方、協議会は各自治体の避難人数や、避難にかかる時間などの基礎データなどは3月下旬に中間報告として発表する方針。富士吉田市や富士河口湖町など10市町村は中間発表のデータを使用し、地域防災計画の改定作業に入るという。県の担当者は「中間発表のデータがあれば、各市町村の地域防災計画も大幅に遅れることはないと考えている」としている。
山梨大地域防災・マネジメント研究センターの鈴木猛康センター長は「災害弱者である要配慮者や、観光業が盛んな郡内地域の観光客については、真っ先に検討しなければならない内容。しっかりと準備をして検討に臨めば、遅れることはなかったのではないか」と指摘。「協議会で早急に検討し、一刻も早く完全な広域避難計画を公開するべきだ」と話した。