2022.2.07

コロナ禍の富士登山観光、環境影響調査

学術委、協議会に提示へ

 富士山世界文化遺産学術委員会は4日、オンライン会議を開き、新型コロナウイルス禍で登山者数が大きく減少したことで、観光や環境にどのような影響を与えたかを調査する項目をまとめた。

 県世界遺産富士山課によると、2020年度は登山道を閉鎖、21年度の登山者は7万8548人だった。観光面では、観光事業者の売り上げや来訪者の行動、環境面では、地形、地質、植生、大気、水質などの変化を調べる。調査は専門業者に委託する方針。

 山梨、静岡両県などで構成する富士山世界文化遺産協議会に提案し、承認されれば4月から調査を開始。12月にも結果をまとめる。調査内容は山梨、静岡両県の観光振興や環境保全などの施策に生かしていくという。

 委員からは「調査で富士山が混雑する原因が分かれば利用者管理の大きな知見になる」「人が少なくなったことで、新たな植物や動物が増えているかもしれない」などの意見があった。

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関は13年の世界遺産登録前の勧告で、吉田口登山道で当時約27万人の登山者を「資産に対する脅威」と警告し、「物理的な損傷、富士山の神聖な雰囲気に対する影響の観点から収容力について検討を要する」と指摘。県は来訪者管理を検討し、1日当たりの望ましい登山者数を設定した。

 同課の担当者は「富士山の登山者減少などで地元経済に大きな打撃を与えている。しっかりと調査し、結果を分析した上で活用していきたい」と話した。学術委ではこのほか、山梨県の担当者が富士山登山鉄道構想の進捗状況などを報告した。

(2022年2月5日付 山梨日日新聞掲載)

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