近隣避難も渋滞ネック
富士山噴火訓練 想定2倍の時間
観光地 異動に課題
富士山噴火ハザードマップ改定後、初めて山梨県内で行われた噴火を想定した実動訓練。富士北麓地域でも火口位置によっては溶岩流が到達しないエリアがあることを踏まえ、より早く移動できる近隣市町村に避難する計画を立てたが、実際には渋滞に巻き込まれ、移動時間が想定の2倍かかったケースも。住民の命を守るため、安全な場所へ早く避難するには、どうすればいいのか-。観光地特有の課題が改めて浮き彫りになった。
27日午前11時5分ごろ、山中湖村役場駐車場に富士吉田市職員55人を乗せた自衛隊車両や大型バスなどが到着した。
市が実施した避難訓練。想定では25分早く着く見込みだったが、富士吉田市内交差点での渋滞や、忍野村内の道路での対向車両とのすれ違いなどで、移動に想定の2倍の50分の時間を要した。報告を受けた市担当者は「夏の観光シーズンなら(到着時間は)さらに延びた可能性もある」とこぼした。
市外への避難は、市内の避難所が定員を超過したとの想定で実施。避難者に見立てた市職員計119人が受け入れ先の富士河口湖町内の駐車場、山中湖村役場に向かった。それぞれ自衛隊車両1台、大型バス1台、乗用車5台で噴火口から近い国道は使わず、県道で受け入れ先まで移動した。
富士河口湖町方面は想定通りだったものの、山中湖村方面は到着が遅れた。想定より移動時間がかかったことを受け、市富士山火山対策室の小佐野五郎室長は「観光シーズンは観光地から遠い道を選択したり、徒歩による避難も考えたりするなど検討を重ねていきたい」と話した。村担当者も「今後、受け入れる側として道路状況などで助言できる情報があれば伝えるなど、連携を密にしていきたい」とした。
この日の訓練は、富士吉田市街地に近い雁ノ穴火口で噴火したとの想定で実施した。噴石などの被害範囲と想定された、市の上宿地区の自主防災会連合会の三浦政秀会長は「ハザードマップ改定で火口が近くなり、非常に心配。今回は訓練だったためスムーズに避難できたが、急に噴火が起こった場合に同じ対応ができるか分からない」と不安を口にしていた。
(2021年11月28日付 山梨日日新聞掲載)