2021.11.07

灰が絡まり前に進めず

富士山噴火を想定 車両運転体験会

 アクセルを踏み込んでも進まない車。ハンドルを取られて流される車体。富士山噴火を想定し、火山灰が敷き詰められたコースの走行を記者が体験した。

 厚さ約10センチの火山灰がしかれたコース。緩やかな勾配は富士吉田市の金鳥居付近とほぼ同じ傾斜にしたという。用意された前輪駆動車に乗る前、県職員から「勾配で停車すると登れなくなりますよ」と声を掛けられた。

 運転席に座りアクセルを踏むと、すぐにハンドルを取られるような感覚に見舞われた。タイヤが空転しているせいか、強い抵抗を感じながらも車は少しずつ前進。停止して再発進しようとすると、タイヤに灰が絡まり前に進まなかったが、アクセルをいっぱいに踏み込み、ようやく抜け出せた。

 体験会の現場で、別の人が乗った四輪駆動車はスムーズに走行していた。

 県富士山科学研究所主幹研究員の吉本充宏さんによると、火山灰に含まれる粘土鉱物は水分を含むと粘着性が強まり、タイヤの溝に付着してスリップの原因になる。吉本さんが2000年の北海道・有珠山(標高737メートル)噴火から数日後に現地入りした際、四輪駆動車も雨水を含んで1~2センチ積もった灰の上では前に進まなかったという。

 火山灰の性質は噴火の仕方や火口と堆積した地域の距離によって異なり、「一概に対策が立てられない」と吉本さん。噴火時の避難の在り方を考える上での難しさを改めて実感した。

(2021年11月5日付 山梨日日新聞掲載)

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