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2021.2.20 所属カテゴリ: ふじさんクエスト / 文化・芸術 /

富士山望む商店の暮らし

 雑誌「暮しの手帖」を創刊し、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」(2016年)のテーマとなったことでも注目された編集者花森安治の著作を収録した「花森安治選集」第2巻「ある日本人の暮し」に「富士山の見えるちいさな百貨店」と題したルポルタージュが収載されている。大月市にあった、食品から化粧品、生活用品などを扱い、地域の暮らしを支える商店を紹介。店を営む一家の日々を生活感あふれる文章で伝えている。

 ルポルタージュは1950~60年代、同誌で連載した「ある日本人の暮し」の一編。連載で、花森は取材対象者として「どこにでもあるふつうの暮し方をしていらっしゃる方」を募集。全国へ出向き、敗戦後の庶民の日常生活を取材、執筆した。

 「富士山の見えるちいさな百貨店」は61年に掲載。当時、大月市初狩町の藤沢地区のメインストリートにたたずむ戸沢商店を取り上げている。富士山を真正面に構え、売り場面積9坪ほどの店の従業員は夫婦と夫の母の3人。花森は商店の品ぞろえから、仕入れ、経営状況まで、店の実態を通し、一家の人間関係と温かい暮らしを見つめている。

 花森自らカメラマンに構図を指示することもあったという、こだわりのモノクロ写真も掲載。総菜や駄菓子が所狭しと並ぶ売り場やバイクで配達に繰り出す姿、カメラの存在を忘れ、肩を寄せ合い雑誌を眺める夫婦など、当時のありのままの姿を切り取っている。

 「花森安治選集」は全3巻で、暮しの手帖社刊。各3960円。

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