富士山でロングトレイル
登山ガイドら10コース提案へ 通年観光へ自然、歴史PR
富士山の登山ガイドらが、富士山周辺の登山道や街道を1周するロングトレイルのルート作りを進めている。今後、行政や観光協会と連携してPRすることも模索する。富士登山だけではない地域の魅力を発信し、通年観光や長期滞在観光の促進につなげたい考えだ。
ロングトレイルは自然歩道を長期間かけて踏破するもので、欧米では4千キロを超えるコースもあり人気が高いという。日本でも長野、新潟県境の山岳地帯を通る「信越トレイル」(約80キロ)などがある。
「富士山ロングトレイル」構想を呼び掛けているのは、富士山などで登山ガイドを行っている一般社団法人「マウントフジトレイルクラブ」(鳴沢村)代表理事の太田安彦さん。「富士山周辺にも魅力的な自然や歴史的な遺物などがある」として企画した。
計画しているルートは山梨、静岡、神奈川の3県にまたがり、総距離は200キロ以上。山梨県内では、現千円札のモデルになった富士山の写真の撮影地とされる身延・中之倉峠、さまざまな種類の花を楽しむことができるという三ツ峠や杓子山、北岳や間ノ岳を望むことができる毛無山などが含まれるという。
富士講の人々に宿泊場所を提供し、登山に必要な食事などの準備をした御師の文化が残る富士吉田市上吉田地区なども加え、地域の自然や歴史に触れられるルートを想定している。
一度に全ルートを踏破するのは難しいため、まずは日帰りで楽しめる10キロほどの10コースを策定し提案する予定。4月に開設するウェブサイトで紹介する。現在、登山ガイドらが実際に歩いてコースの安全性などを確認している。
ルートの普及などに向けた組織の設立も検討。環境省や山梨県、地元市町村、観光協会に協力を呼び掛け、富士山に集中する観光客の分散や通年観光につなげたい考えだ。
太田さんは「新型コロナウイルスの影響で、自然を楽しむアクティビティの需要は高まっている。長期的に持続可能な観光として発展させたい」と話している。
(2021年2月9日付 山梨日日新聞掲載)