夏富士の幕開けと安全を祈願

　７月１日に山開きを迎える富士山（山梨県側）では、毎年６月３０日に「富士山開山前夜祭」が、７月１日に「富士山開山祭」が麓の富士吉田市内で行われる。前夜祭や開山祭は、富士山を信仰の対象とする富士講、富士講を受け入れるための宿坊である御師など富士山とともに生活してきた人にとって古くから夏の到来を告げる重要な行事である。

富士山開山前夜祭・「お道開き」の儀式

　前夜祭は、富士講信者をはじめとする参加者が富士急行線富士山駅近くの金鳥居市民公園から北口本宮冨士浅間神社まで（約２キロ）を歩く「富士講パレード」から始まる。パレードは、富士スバルラインの開通など時代とともに富士登山のスタイルが変化する中、伝統的な富士登山をＰＲするため１９９０年から前夜祭の中で行われている。

　浅間神社到着後、神社で１～６月の厄除けをする「夏越大祓（なごしおおはらえ）」や参加者による「茅の輪（ちのわ）くぐり」などの神事を行い登山の安全を祈願する。そしてクライマックスの「お道開き」の儀式では関係者が見守る中、日本神話に登場する手刀男命（たぢからおのみこと）が、本殿西にある吉田口登山道の起点「登山門」のしめ縄を木づちで断ち、夏富士への道が開かれる。開山祭は翌７月１日に同神社で神事のみ行われる。

　なお、５合目の小御嶽神社でも７月１日に開山祭が行われる。神社に祭られている大天狗によるお道開きの儀式や富士講の儀式「お焚き上げ」が行われ、神事の後、富士山形みこしや、明神形みこしが同神社から繰り出し、５合目ロータリーなどを練り歩く。

富士山開山前夜祭（２０２３年６月３０日）

◇13:30 出発式(金鳥居市民公園)
◇13:45 富士講パレードスタート(北口本宮冨士浅間神社まで)
◇14:30 踊り披露(婦人会、保育園児)
◇15:00 神事(夏越大祓、茅の輪くぐり ほか)
◇16:00  「お道開き」の儀式