令和の富士、今と未来語る [1]
【噴火対策】長崎知事・避難する時間短縮へ 川勝知事・子どもの防災力育む
-富士山噴火に備えた広域避難計画では、富士山周辺の住民の避難先が決まっていますが、マイカー避難による渋滞も懸念され、高齢者、入院患者、観光客などへの対応に課題もあります。2020年度末までに改定される富士山噴火ハザードマップは想定される火口のエリアが拡大される見通しで、広域避難計画の見直しも考えられます。安全で迅速な避難に向けた課題をどのように捉えていますか。
長崎知事 市街地に近いところからの噴火を想定すると、溶岩流の到達時間は従来よりも短くなる。確実に避難する時間を確保しなければならない。計画と訓練のPDCAサイクルで、より避難に要する時間を短くしたい。また、避難の時間を稼ぐにはハード対策しかない。溶岩流の導流堤などを大規模に展開しないと命は守れない。火山噴火は普通の災害とは異なり、広域的な避難が必須。避難期間も相当長くなる。山梨県の力だけでは無理だ。昨年、火山防災強化推進都道県連盟を立ち上げ、国の積極的な関与を要望している。国と県、市町村が一体となって地域住民、観光客の命を守るための土台をなるべく早く築きたい。静岡県ともさまざまに協力していく。
川勝知事 噴火に備えた訓練はしてきているが不確定要素が多く、「問題ない」とは言い切れないのが実情だ。静岡県には子どもたちに防災や災害時の対応を学んでもらう「ふじのくにジュニア防災士制度」があるが、富士山の周辺で暮らす子どもには噴火について具体的に学んでもらう必要がある。改定作業中のハザードマップは、新たに発見された噴火口が反映されることで、現在よりも災害が起こりうる範囲が広がることは間違いない。まずは正しく情報を出して理解してもらうことが大事だ。避難先は自県内であることが一番だが、山梨、静岡の県境付近の住民はどちらに逃げた方がベストなのかといった視点で検討をしていく必要がある。両県が一体となって避難先を考えていかなければならない。
-富士山では昨年夏、落石が相次ぎ、女性が亡くなる事故や山小屋に被害がありました。落石対策の現状と、今後必要になる取り組みについて見解を伺います。
長崎知事 登る人が十分注意することが何より大切だが、それだけではどうにもならない。登山道の落石から身を守るハード整備が重要だ。下山道も身を隠す場所が極めて限られているので、地元市町村とも相談して手当てする必要がある。人工知能(AI)など先端技術の導入などがアイデアとしてある。人命に関わることなので、あの時こうしておけば良かったなどと後悔したくない。考えられる限りのことは考え、実行に移したい。
川勝知事 富士山に限らず、山である限り落石を完全に防ぐことはできない。静岡県としても対策は進めているが、全てをコンクリートにするわけにはいかない。自助の精神が大切で、まずは整備された登山道から外れず、噴火時にも効果があるヘルメットを着用するべきだ。自然が相手だということを忘れず、落石は起こりうることを前提に、自分の命は自分で守る意識を登山者には持ってほしい。
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2月23日は令和初となる「富士山の日」。世界文化遺産に登録されてから7度目となる記念日に合わせ、山梨日日新聞と静岡新聞は山梨県の長崎幸太郎知事と静岡県の川勝平太知事にそれぞれインタビューを行いました。2人の発言を対談の形で伝えます。(全5回)