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2023.6.09 所属カテゴリ: ぐんないスポット探訪 / 富士河口湖町 /

天下茶屋

富士の眺望 太宰も魅了

 標高1300メートルの高所に立つ天下茶屋は、作家太宰治が1938年に2カ月ほど滞在した場所で、著書の初版本や実際に使用した家具などを展示した記念館があり、当時の太宰の生活をうかがい知ることができる。

 御坂(現笛吹市)と河口湖を結ぶ道路(旧御坂みち)の建設に伴って、1931年に峠の隧道(御坂隧道)が貫通。3年後の1934年、隧道近くに開業。富士山の眺めの素晴らしさから「天下一茶屋」などと呼ばれたが、歴史家やジャーナリストなどとして活躍した徳富蘇峰が新聞に紹介した記事がきっかけで「天下茶屋」と言われるようになった。

 1967年には新御坂隧道が開通し、人の流れが新道路に移行。道路事情の変化は、茶屋を一時廃業にまで追い込んだ。

 現在の店舗は1983年に再建。現在では県内屈指の観光地の一つにもなった。訪れる行楽客らに太宰をしのんでもらおうと、2階は太宰治文学記念室として無料で公開している。富士山と河口湖を一望できる6畳間に太宰が滞在していた部屋を再現。滞在時に使用した机や火鉢、写真パネル、代表作の初版本などが展示されている。1階は食事どころ。ほうとうや甘酒などを味わうことができ、味を気に入り何度も訪れる“リピーター”も多い。

 天下茶屋を一歩外に出ると富士山と河口湖の絶景が目に飛び込んでくる。景色を写真に収めようとカメラを手に訪れる行楽客も多い。

 作家井伏鱒二と太宰治が親しんだ場所として知られる天下茶屋。青森県出身の太宰が山梨とゆかりを持つようになった背景には、師匠である井伏の影響が色濃い。

 小説の取材や趣味の釣りのためにたびたび山梨を訪れていた井伏は、天下茶屋を仕事場にしていた。1938年、井伏の勧めで店を訪れた太宰は2カ月ほど滞在。この時の経験をもとに「富嶽百景」を執筆した。

 太宰没後の1953年、店から続く遊歩道沿いに文学碑が建立された。石碑には「富嶽百景」の一節「富士には月見草がよく似合ふ」が刻まれている。1978年からは毎年6月に「山梨桜桃忌」として、太宰ファンや研究者らが交流。太宰をしのぶ機会となっている。

所在地

◇山梨県富士河口湖町河口2739

営業時間

◇10:00~17:00

休業日

◇年中無休
※天候などにより休業の場合あり

アクセス

【電車・バス】
◇富士急行線河口湖駅から路線バス「天下茶屋」行きで「天下茶屋」下車
【車】
◇中央自動車道河口湖ICから国道137号、県道708号経由
※県道708号=12月上旬~4月下旬は冬季閉鎖

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