「富士山を世界遺産にする国民会議」設立
豊かな「文化」アピール 7月8日、東京でシンポ
7月1日は、富士山の山開き。例年多くの登山客が登頂を目指すが、今年は特に、日本最高峰・富士が注目を集めている。4月、各界各層の代表者によって「富士山を世界遺産にする国民会議」(略称・富士山会議、会長・中曽根康弘元首相)が設立されたからだ。
日本の心の象徴であり、ランドマークでもある富士山を、ユネスコ世界遺産委員会が決定する「世界遺産(文化遺産)」として登録することを目的にした国民運動の盛り上がりを図るのが狙いだ。現在、内閣府にNPO法人の認可を申請している。
同会議(事務局・東京港区虎ノ門)は、国民運動のセンター機能を有し、世界遺産登録に必要な調査、キャンペーンの企画・実施、政府や国際機関への働き掛け、登録後の保護管理体系への提言、富士山基金の設置-といった活動を進める。
組織内には、富士山の文化的価値の研究や文化遺産としての登録意義を研究する富士山文化遺産登録調査委員会も置かれた。富士山の多様な文化的価値について再確認するため、同会議が7月8日に、東京・明治記念館で開く第1回シンポジウム「富士山が世界に誇る文化的価値」は、同委員会の中間報告を兼ねる。
古代から、富士山は「神の山」として庶民の信仰と尊敬を集め、その雄大な姿や美しさは古典文学や絵画など数限りない芸術作品に描かれた。宗教から芸術表現に至るまで、日本人の精神文化を語る時、欠くことのできない存在と言える。
十数年前にも、富士山が“燃えた”時があった。富士山を世界遺産(自然遺産)に登録しようという運動が1994年、山梨、静岡両県の住民を中心に盛り上がった。全国から集まった240万人を超える署名を添えて、国会に請願、採択されたが、環境問題の悪化などから、政府は富士山を世界遺産として推薦することを見送った。
その後、山梨、静岡両県の地元自治体や各種NPOなどの努力によって富士山を取り巻いていた環境汚染問題は徐々に解決されつつある。また、ユネスコの世界遺産委員会で文化遺産の基準が見直され、「文化的景観」という新しい道も開かれた。富士山が文化遺産に登録される可能性が出てきた。
(2005年6月29日付 山梨日日新聞掲載)