富士山保全へ南北広域会議 山梨、静岡両県で発足 ごみ、し尿対策まず検討
富士山の自然環境の保全と適正利用を協議する「富士箱根伊豆国立公園富士山地域環境保全対策協議会」が発足し、11日に静岡県富士市文化会館で初会合を開いた。富士山ではこれまで山梨、静岡両県がそれぞれ独自に保護対策を行ってきたが、協議会は環境庁と両県、地元市町村が連携し総合的な保全対策を進めるのが目的。今年5月ごろにはし尿やごみの処理問題に的を絞った対策をまとめる。また来年5月ごろまでに富士山地域環境保全対策要綱を策定し、1997年以降に保全整備事業を実施する。
協議会は環境庁自然保護局長、山梨県環境局長、静岡県環境文化部長、地元市町村を代表して富士吉田、富士の両市長ら7人で構成。環境庁は「富士山で年間510トンと推計されるごみやし尿が緊急を要する問題」とし、まずこの問題の対策を検討することになった。このほかマイカー規制など観光客の過密を防ぐ手段や、急増するオフロード車から植生を守る方法なども検討する。
富士山では行政区が山梨、静岡両県に分かれ、両地域の地形、気象、産業形態などが異なることから、これまで利用や保護への取り組みも個別に行われ、南北ろく一体となった対応は難しかった。
こうした中、昨年12月に「富士山を考える会」が国会に提出していた「富士山の世界遺産リスト登録に向けての請願」が衆参両院で採択されるなど、富士山の環境保全への関心の高まりがあり、環境庁でも国立公園のきめ細かい保全のため整備に取り組むことになった。
また、環境庁が96年を目指して進めている国立公園の地種区分などの公園計画の見直し作業も、同協議会の活動と並行して行われる。見直し作業は南関東地区国立公園・野生生物事務所が中心になって進めており、現在事務所案を関係市町村に提示、意見を求め調整を進めている。
協議会の活動は公園計画見直しの手続きとは別だが、見直し作業と併せて富士山の保全の在り方を検討、見直し後は計画を基に協議会が具体的な施策を行うことになる。
複数の県にまたがる国立公園での同様の協議会の設置は88年の日光国立公園・尾瀬地域に次いで富士山地域が全国で2カ所目。尾瀬では3県知事によるサミットが開かれたほか、尾瀬保護管理財団(仮称)をつくる計画も進んでいる。 【当時の紙面から】
(1995年1月12日付 山梨日日新聞掲載)