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2018.10.04 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 10月 /

性能増し列島にらむ 富士山頂に新レーダー

 富士山頂で工事が進められていた気象庁の2代目富士山レーダーが完成、2日初めて報道関係者に公開された。スッキリと晴れ渡った秋空に映えるピカピカの白いドーム。この中に日本列島のほぼ全域ににらみをきかすレーダーが据えられている。世界一といわれるこれらの観測機器を、富士山測候所員の説明を受けながら4時間にわたって見た。

 標高3776メートルの山頂に立ったのが午前10時。気温は3度。雪はなかったが羽毛服を着ていても寒い。

 山頂の剣ケ峰にある測候所のドームの中-。2階に銀色に光るパラボラアンテナ。直径5メートル。1分間に5周回転し、北は北海道南部から南は九州東部まで半径800キロの探知能力がある。世界一の気象レーダーだ。

 探知距離や送信出力(1.5メガワット)は初代レーダーと同じだが、性能はぐんと増している。レーダー担当者の話だと、特にブラウン管に映るエコーの解像能力が一段と増し、黒、灰、白の3色を使って雨域を6段階(初代は黒、白の2段階)に分類、降雨量がずっと精密に予想できるようになった、という。

 この日は全国的に晴れ上がったため、本土内では雲を示す反応はなかった。しかし茨城県沖と八丈島付近の海上には厚い雨雲の白い影が見え、その真ん中には1時間に約20-75ミリの降雨を示す灰色のエコーがくっきり出ていた。

 新レーダーには半導体など最新のエレクトロニクス技術がたっぷり使用されている。このため真空管が主体だった初代レーダーに比べ、機器が小型化、操作も簡単になり所員を喜ばせている。

 年1回取り替えが必要なレーダーの心臓部マグネトロン(電波発信機、1万5000ボルト)の取り替え作業が「びっくりするほど簡単になった」と、所員たちはうれしそうだった。このほか、アンテナを回転させる軸にはサーモスタット付きのヒーターが取り付けられ、霜がついて回転がスムーズにいかなくなる心配もなくなった。

 20日から本格運用を開始、台風、集中豪雨の様子など日本の空の“見張り役”として活躍することになる。【当時の紙面から】

(1978年10月4日付 山梨日日新聞掲載)
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