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2018.2.18 所属カテゴリ: 山日紙面で見る富士山 / 2月 /

鳴沢に豊富な地下水脈 ついに掘り当てる 総合開発へ朗報

 岳ろく総合開発の前提である富士山北ろくの地下水探査を県は農林省に依頼、36年度深層地下水調査事業として昨年7月いらい電気探査、大掛かりな人工地震測定を経て、さる11月から南都留郡鳴沢村地内の標高1,000メートルの地点3カ所でテストボーリングを進めていたが、15日に約120メートルのところで豊富な地下水脈を掘り当てたとの連絡が17日県耕地課にあった。この朗報に喜んだ同課では、さっそく農林省に通知するとともに、20日には担当の農林省農地局資源課山本技官が入ろくしてパイプさし込みなどの緊急措置をとり、同時に同日東京大学津屋地震研究所長も招いて、未知の分野の多い富士山中腹の地層を学問的に解明することになった。35年度に実施した同じ富士山北ろくの富士豊茂開拓地のテストボーリングが失敗に終わったあとだけに、こんどのボーリングの成功、豊富な地下水脈の発見は農業部門だけでなく首都圏整備に伴う官庁、会社、工場などの誘致、その他民間の開発計画など総合開発の数々を現実化した功績は大きい。

 富士山は過去数万年の噴火の繰り返しによって山体は溶岩と火山砂れきの互層におおわれ、年間2000ミリの降水量はことごとく地下に浸透し表流水がなく富士北ろく4万ヘクタールの水は富士五湖と忍野八海にわき出していると考えられていた。この伏流水を標高1000メートルの地点で地表にとり出すことが北ろく開発の決め手であるとの見方から、県は農林省と合同して36年7月中旬から深層地下水調査事業に着手した。

 第一次調査は、東は吉田登山道から西は鳴沢丸尾まで約8キロにわたり、標高1100メートルの等高線に沿って電波探知機で地下構造を調べ、続いて8月10日ダイナマイト250本を一度に爆発させる人工地震の弾性波調査を12個の地震計を使って大規模に実施した。この調査資料に基づいて鳴沢村地内の3カ所でのテストボーリングが昨年12月からはじめられ、2カ月半ぶりに約120メートルのところで地下水脈を掘りあてたもの。17日現在地表から93メートルのところまで地下水が上昇、20日からは調査を担当した山本技官と東大津屋地震研究所長の手で電気検層など一連の精密調査が行われる。

 このテストボーリングの成功に気をよくした農林省は、36年度の360万円を上回る約400万円の深層地下水調査費を37年度予算に計上しているといわれ、ことしの夏には吉田口登山道の東から山中湖までの一帯で同様の調査を行うことを内定しているという。富士山の中腹の地下水脈は農業面ばかりでなく岳ろくの総合開発を急ピッチで本格化させるものとみられる。

 県耕地課の話 自信はあったがやはり掘り当てるまでは不安だった。もちろん当面は農業開発に活用するが、総合開発の先駆になったわけだ。これで自信をつけたので富士豊茂をもう一度基礎調査からやり直してみたい。【当時の紙面から】

(1962年2月18日付 山梨日日新聞掲載)
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