富士のモグラケーブル 実現へ第一歩 県総合開発審議会で承認
富士山にモグラ・ケーブルをつくろうという県の事業計画が、山梨県の総合開発審議会で承認され、“夢のプラン”の実現へ一歩をすすめた。
モグラ・ケーブルは、富士山麓から5合目まで専用自動車道路を建設、5合目と頂上の間をモグラ・ケーブルで結ぼうという計画で、総工費は35億円、5年計画で東京五輪までに完成しようというもの。
自動車道は、富士吉田市から5合目の小御岳まで19キロを、6.5メートルの幅で舗装する。この工費はざっと8億3000万円。モグラ・ケーブルは、富士山腹にトンネルを掘り、ケーブルカーを運転するもので、トンネルの長さは3.45キロ、幅5メートル、高さ5メートル、最高傾斜33度。この建設費は14億3000万円。車両はケーブルカー20人乗り2台、それに専用道路を走るバスが50人乗り50台。ケーブルはループ式またはツルベ式で、これらの費用が5億2000万円。さらに山頂に5000人を収容するホテルを建設(6億7000万円)する。これらの財源はすべて政府起債に求め5年据え置き、15年の年賦償還として、年間100万人の利用者を見込み、このもうけは2億1000万円。経営は十分に成り立つという。
同日の審議会では、特別名勝である文化財として支障はないか、トンネルは掘れるか、地層はどうなっているか、活火山の危険はないか、県営にする場合の起債の見通しはあるのか、などともりたくさんの質問が出たが、オブザーバーとして出席した運輸省の竹下技官は「文化財との問題は、5合目まで専門道路をつくれば支障をきたさない。地層は権威のある航空写真判定によると、5合目から頂上までは玄武岩の堅い層なので、9分通り確実である。多少やわらかいところがあっても、トンネルを掘るのはやさしい。地表面から200メートル深いところを掘りあげるのがよいと思う。活火山の心配は全くなく、死火山というのが一致した地質学者の説であり、万一の不安もない」と答えた。
また県の田中室長も「起債については、採算がとれればよいという了解を得るよう、自治庁と話を進めている」と景気のよい説明があった。この結果、審議会は国立公園法、文化財保護法、山頂の地籍問題を十分研究したうえでという条件を添え、さらに、「この事業は先願優先、中央道の着工が間近い、5年後の五輪大会という時間的な問題もあるので、早急に調査に着手し、認可申請を出すように」との積極的な賛成態度を決め、この事業計画を原案通り知事に答申することを申し合わせた。【当時の紙面から】
(1959年6月11日付 山梨日日新聞掲載)