〈富士山と気象〉山頂気温は北極圏並み
富士山頂の年間平均気温は氷点下6.2度。現在の日本の最北地である北海道の稚内が6.8度、最低気温の記録を持っている旭川でも6.9度なので富士山頂の寒さは飛び抜けている。平地でこの寒さの土地を探すと、シベリアの北極圏付近の地域が相当する。
平均気温の平年値を月別に見ると、1月の氷点下18.4度を低温のピークに、6月になって1.1度とやっとプラスに転じ、7月に4.9度まで上昇、8月に6.2度と最高になり、9月は3.2度まで低下、10月以降は再びマイナスの世界に入る。最も暖かい月の平均気温が10度以下は寒帯気候(ドイツの気候学者ケッペンの気候区分)になるから、温帯気候の日本にあっても、富士山頂は寒帯気候に属す。
月別変化で見たように、富士山頂の平均気温がプラスになるのは1年のうち4カ月しかない。さらに、最低気温がプラスになる月は7月~9月だけ。この3カ月が気温面からも登山の最適期と言える。
富士山頂の最低気温の記録は1981年2月27日の氷点下38.0度。国内記録は旭川の氷点下41.0度で日本一ではない。しかし年間平均気温では富士山は旭川より約13度も低く堂々の日本一。その理由は山頂の空気が昼になっても暖かくならないからだ。例えば7月の最低気温と最高気温をみると、旭川が15.9度と25.8度で10度も違うのに対して、富士山は2.4度と7.5度で約5度しか違わない。日中に気温が上がらないため、平均気温は低くなる。
最高気温の記録は1942年8月13日の17.8度。富士山頂はまだ、気温20度を超えた日がない。
山頂と麓の河口湖(860メートル)とは平均気温で、夏16.2度、冬17.8度の違いがある。高さ100メートル上るごとに約0.6度気温が下がっていく計算になる。
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