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2002.6.21 所属カテゴリ: ふじさんクエスト / 気象 /

「雷様を下に聞く」は本当か

 

 「頭を雲の上に出し、雷様を下に聞く・・・」ではじまる歌「ふじの山」。この歌では、雷様を下に聞くという表現で富士山の高さを称えているが、気象学的には下の時もあれば、横や上の時もあるというのが妥当なところだ。

 雷は雷雲から発せられ、雷雲は積乱雲のことを指す。積乱雲は、上空に寒気が入ったり地面付近が真夏の強烈な太陽で照らされたりして大気が不安定になると、上昇気流によって発生する。発達すると雲頂は対流圏と成層圏の境まで達し、上昇する頭を抑えながら積乱雲の上部は横に広がりカナトコ(鍛冶屋が鉄を打つのに使った台)状となる。いわゆるカナトコ雲である。雲の底は地表付近から2000メートルくらいの高さがあるが、雲の頂は1万メートル以上にも及ぶ。雷はこの積乱雲の中で生まれる。

 そのメカニズムは詳しく分かっていないが、雲の中は猛烈な上昇気流が起きていて、ひょうやあられなどの氷の粒が雲の中で激しくこすられ、ぶつかりあい静電気がたまり、積乱雲は巨大な静電気のたまり場になっている。この電気が十分にたまると放電が始まり、これが雷となる。地上に落ちたのが落雷となる。ほかにも雲の中や雲の間での空中放電もある。電光とともに発せられる雷鳴は、巨大な電流が瞬時に流れ、空気が瞬間的に熱膨張したことによる空気の振動音である。

 富士山は風が当たると地形的に上昇気流が発生しやすく、夏場はもくもくとした積乱雲が山を覆う。富士山頂はまさに雷雲の真ん中あたりを観測することになる。地上への雷(落雷)は、歌の通り「雷様を下に聞く」となるが、空中放電による雷は、頭上や同じ高さで見舞われることもある。電光が横に走ることもある。そうなる前に早めに避難しないと大変な目に遭う。

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