奇跡の魚 後世につなぐ
遊漁料収入減でもブラックバス削減
西湖漁協「唯一の生息地守る」

更新日:2018年09月09日(日)

 クニマスの保護に向け、富士河口湖町の西湖漁協が外来魚オオクチバス(ブラックバス)の削減へ、かじを切る見通しになった。ピーク時に比べ減ったとはいえ、バス釣り客は全体の2割を占める収入源の一つ。オオクチバスの漁業権を返上すれば遊漁料を徴収できなくなり、収入ダウンは必至だ。それでもクニマスが唯一生息する湖の漁協として、利益よりも、「奇跡の魚」を後世につなぐことを選択した。

 2010年12月。秋田・田沢湖で絶滅したとされていたクニマスが生息していることが確認された。全国から報道陣が駆け付け、西湖は一躍、注目の的に。「希少なクニマスが生息する湖で、特定外来生物のオオクチバスを増やすのはどうなのか。西湖にしかいないクニマスを守っていかなければならない」。11年に組合長に就任した三浦久さんの中で、オオクチバスの漁業権返上を目指す気持ちが強くなった。

 もともとオオクチバスによる食害への懸念はあった。三浦組合長が子どものころ、当たり前のように見掛けたギギやモロコといった魚が、オオクチバスの増加に伴い、姿を消していた。

 「所狭しとバス釣り客が押し寄せ、湖がにぎわっていた」(三浦組合長)というブームも去り、バス釣り客はピーク時の半分以下まで減っていた。遊漁料収入を手放すことへの抵抗も小さくなっていると考えた。

 漁協の総会で、オオクチバスの漁業権返上を提案。当初は反対する声もあったが、総会などを通じて必要性を繰り返し説明した。今年2月の総会で諮ったところ、賛成する組合員が9割近くに上った。

 一方で、漁業権返上には課題も残る。ブームが下火になったとはいえ、バス釣り客は全体の約2割。バス目当ての客に遊漁券(1日券600円、年間券5000円)の販売ができなくなり、漁協の収入が減るのは確実だ。

 漁業権を返上しても、引き続き西湖でバス釣りを楽しむことはできる。無料で釣ることができるため、一時的に釣り客が増えることも想定される。オオクチバスの漁業権を持たない周辺の湖では、バス目当ての人と、遊漁料を払って別の魚釣りを楽しむ客との間で、釣りのポイントを巡ってトラブルになるケースがあった。バス釣りの人は指導の対象から外れるため、マナーの悪い客への注意がしづらくなる面もあるという。

 それでも湖畔で旅館を営む渡辺安司さん(60)は「クニマスを後世に残すための責任がある。オオクチバスの増殖にかかる費用を他の魚の成育に回せば湖のためにもなる」と漁協の方針に一定の理解を示す。三浦組合長もこう言って、力を込めた。「漁業権の返上がクニマスや湖の未来につながると信じている」

クニマスについて話す三浦久組合長=富士河口湖町のクニマス展示館
クニマスについて話す三浦久組合長=富士河口湖町のクニマス展示館
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