登山者の身を守る防護壁・導流堤

登山者の身を守る防護壁・導流堤

 年間20万人を超える登山者が利用する富士山吉田口登山道には、登山者を落石などから守るため、「導流堤」と呼ばれる金属製の堤防が設けられている。12人の死者を出した1980年の落石事故を教訓に、山梨県が1990年ごろから順次建設。現在は6合目付近から本8合目付近まで計22カ所で見られる。

 吉田口登山道を管理する山梨県富士・東部建設事務所によると、落石事故だけでなく、雪崩を伴った土砂崩れ「雪代」による登山道の崩壊を防ぐ役割もある。短いもので全長12メートル、長いものは110メートルになる。高さも1メートル以下から7.5メートルと大きさはさまざまだ。

 多くは鋼製の枠に富士山の自然石を詰め込んだ構造をしている。近くからは直方体が階段状に積まれているように見え、遠くから見ると台形のように見える。赤や茶色に塗装してあるのは、「火山岩など周囲の景観への配慮」(同事務所)だという。



 国際記念物遺跡会議(イコモス)が世界文化遺産登録の審査の際に、導流堤を「山岳の神聖な雰囲気を阻害している」と指摘したことを受け、県は景観対策を本格的に始めている。2014年10月には本8合目の導流堤1カ所で塗装材を変更。赤茶色から、より山肌に近い焦げ茶色に変え、鋼製を目立たなくするため、凹凸が出るように吹き付け工事もした。

 また対策の一つに緑化も視野に入れる。富士山を含む富士箱根伊豆国立公園を管理する環境省と調整しながら、山麓に生えるミヤマヤナギやイタドリなどの挿し木を試行。6〜8合目の複数の導流堤で芽吹きを確認した。

 ただ同じ国立公園内でも自生する植物を移すことには慎重な意見があり、「関係機関と調整が必要」(県道路管理課)との課題も残る。

山梨日日新聞社 YBS山梨放送
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