雪形「農鳥」だけじゃない

雪形「農鳥」だけじゃない
 雪化粧した山肌に浮かび上がる形を「雪形」と呼ぶ。富士山では、山梨県の北麓地域に初夏の訪れを告げる「農鳥」が最も有名だが、その山容を見続けていると、冠雪から雪解け(11月から7月)の間、5合目以高のさまざまな地点に、さまざまな形を浮かび上がらせる。

 長年にわたって富士山の雪形を研究している山梨県鳴沢村の大宮仁さんによると、雪形の代表格「農鳥」は、雪解けとともに同じ場所で「ひよこ」「たまご」に姿を変えていく。吉田口登山道と須走口登山道が合流する8合目付近の鶴が羽を広げて飛んでいるように見える「舞鶴」や、竜が富士山頂に向かって登っていく姿に見える「登り竜」は、古くから知られているという。

 観察する時期や場所を変えることで、新たな発見があるのも雪形の魅力。残雪に囲まれた地肌が形作る「かんのんさま」や、麓まで雪が降ると現れる「恐竜」といった珍しいタイプもある。「カエルくん」や「わかさぎ」「クニマス」など大宮さんが見つけて、命名したものも含めると、これまでに約40種類が確認されているという。

 「雪形」という言葉は昭和40年代に普及したといわれているが、富士山の雪形は、平安時代の伊勢物語で「鹿の子まだら」として登場。葛飾北斎も冨嶽百景「甲斐の不二、濃男」に雪形を描いている。また、富士河口湖町出身の小説家・中村星湖は昭和33年発行の「富士巡り」に「うら富士の残雪」を寄稿し、「農鳥」をはじめ、「帰る雁」「天狗面」「火炎仏」などの形を紹介している。
富士山NET−富士山の雪形
富士山の雪形 「たまご」 富士山の雪形 「鹿の子まだら」
たまご 「たまご」は「ひよこ」が消えた後に出現。「たまご」が見える頃は山腹はほとんど地肌が露出し、夏山の装いとなる 鹿の子まだら 「鹿の子まだら」は富士山全体に残る雪形を指す。子鹿の背中の斑点模様に似ていることに由来する


山梨日日新聞社 YBS山梨放送
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