なぜ富士山頂に境界がないのか?

なぜ富士山頂に境界がないのか?
 富士山は山梨、静岡両県の間に位置するが、山頂部から東側斜面にかけては境界(県境)が定まっていない。境界がない状況は古くから続いているとみられ、明治時代には国が境界調査を実施したが、両県の主張が対立。結論が棚上げされてきた経緯がある。

 山梨県市町村課がまとめた資料によると、江戸時代の地誌「甲斐国志」には「8合目より頂上に至りては、両国の境なし」と書かれ、当時から境界のない場所だったことが読み取れる。

 1897年、当時の宮内省御料局が境界調査を実施したが、山梨、静岡両県が異議を唱えた。1905年には静岡県側が「8合目境界」を主張。一方、山梨県側は福地村(現富士吉田市)と鳴沢村が07年に山頂に境界を設けるよう求めたという。

 ただ、静岡県側が主張したとされる「8合目境界」が、どんな内容なのかははっきりしない。同県自治行政課の担当者は「資料がないため、把握していない」と言う。

 両県はその後、それぞれ独自に測量をしたが、境界画定には至らなかった。1951年には当時の両県知事が会談し、境界をめぐり争わないことで一致したとされる。横内正明山梨県知事と川勝平太静岡県知事は2014年1月、ともに境界問題を議論の対象にしない考えを示しており、問題は現在も棚上げされた状態だ。

 なお、富士山頂の土地については1974年の最高裁判決で、その所有権が富士山本宮浅間大社にあると確定している。また、富士山頂郵便局、富士山特別地域気象観測所の所在地は静岡県となっている。山梨県にはちょっと不利な状況だ。登山客は圧倒的に山梨県側からが多く、かつて甲駿両国で山論があり「諸州採薬録」には「(富士山は)甲州の山で…」との記述があるなど山梨県びいきもしたいところだが、ここは「神聖な富士の山は信仰の対象として神社のもの」ということなのだろう。

 国土地理院によると、全国では富士山頂を含む14カ所で県境が定まっていない。

山梨日日新聞社 YBS山梨放送
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