世界遺産「富士山」へ プロジェクト始動
近藤文化庁長官インタビュー
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富士山「文化」を発信 世界遺産めざし連携 都内でシンポジウム
 文化庁の近藤誠一長官が山梨日日新聞のインタビューに応じ、世界文化遺産登録が確実となった富士山の入山者抑制や周辺の開発規制など保全策について「相当、思い切った措置を取ることが、中長期的に見て地元にとってプラスになる」と述べ、取り組みの強化を求めた。16日からカンボジアで始まる国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界遺産委員会で富士山の遺産登録が決まるが、諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)が除外を求めた三保松原(静岡市)を含む登録に向けて、「われわれの立場をしっかり主張する」と語った。

 −イコモスが富士山について「世界文化遺産登録にふさわしい」と勧告した。感想は。

 直近で登録された石見銀山遺跡(島根県)と平泉(岩手県)は初回が「登録延期」で、最近は(審査が)厳しいと感じていた。ただ、昨年12月のイコモスによる追加情報の要請で、資産の名称変更や三保松原の除外を求められたことで、逆に「三保松原なしの狭い富士山で登録はできるかもしれない」という、希望みたいなものは持った。
 何といっても、富士山を落とすわけにはいかなかった。日本の象徴的な存在で、「登録」でなかったらどうしようかと思っていた。そういう意味では、本当にうれしかった。

 −イコモスは富士山と周辺の環境保全のため、厳しい規制を求めているが。

 筋違いの要求はなく、相場観からすると、いずれももっともといえばもっともだ。世界遺産委員会では「できるだけのことをやる」という決意を表明することになる。
 現状でも、現地を見たイコモスの審査員が看板やボートなどを気にしたようだ。(登録を機に)観光客が増えれば商業施設が増える可能性がある。相当思い切った措置を取ってほしいし、その方が中長期的に地元の観光や商業関係にとってもプラスだと思う。

 −麓では現在も法規制がかけられている。新たな規制は必要と考えるか。

 法律でも、制度でも、それ以外の方法でも、どういう手段でもいいので、効果的に景観とか開発を制限することが確保されれば、地元の人が納得しやすい方法にすればいい。地元のサポートがないと、効果的な保全ができない。これは粘り強い話し合いが必要だ。

 −イコモスには、富士山の登山者の規制も求められた。

 そこは地元にお任せしたい。ガラパゴス諸島は世界遺産になった後に十分な規制ができず、外来種の侵入が問題となっているようだ。やるべきことをやる、という日本人の評価をここであらためて確認できるような措置を取ってほしい。

 −入山料については。

 人数制限とかいろいろな趣旨はあると思う。入山料は環境保全に使うと思うが、お金が絡むところで、私の口からどうすればいいとは申し上げられない。

 −政府は三保松原を含めた登録を目指していくことを決めた。どうアピールするか。

 「芸術と信仰の両面を証明する不可欠な構成資産」という追加情報要請で主張したことに、さらに磨きをかける。カンボジアに早めに行き、審議が始まる前に、委員会の雰囲気やどの委員に発言力があるか。その辺を見極めて、三保松原の価値を説明したい。
 ただ、富士山を遺産登録することが最優先。その前提で、登録の中に三保松原が入るように理解を求めるというわれわれの主張を続けていく。

2013年6月11日付 山梨日日新聞掲載


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