世界遺産「富士山」へ プロジェクト始動
世界文化遺産 2013年登録目指す
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国に推薦書原案を提出 「日本文化の象徴」
 山梨、静岡両県が進めている富士山の世界文化遺産登録に向けた作業は、7月27日に文化庁に推薦書原案を提出したことで一つの区切りを迎えた。推薦書原案は、信仰と芸術の2つの側面から富士山の高い価値を訴え、「日本と日本の文化を象徴する名山」として登録を求める内容だ。国も来年2月までに国連教育科学文化機関(ユネスコ)に正式な推薦書の提出を目指す。早ければ2013年夏に「世界の宝」として登録される。
世界文化遺産登録を目指す富士山。構成資産の一つである精進湖から望む
 山梨、静岡両県が登録活動を開始してから6年余り。登録実現に必要なユネスコへの推薦書提出作業を、国にバトンタッチするところまでこぎつけた。ただ登録実現には今後も海外の専門家の現地調査が必要となるため、今後はその受け入れ準備なども求められる。

 両県は2005年に合同会議を立ち上げ、富士山の世界文化遺産登録活動を開始。当初の目標は11年度の登録実現だったが、海外の専門家らのアドバイスを受け、構成資産候補の選考基準を見直すなどして当初の目標実現を断念。この後も必須の構成資産候補である富士五湖の文化財指定手続きで必要とされた地権者の同意取得に時間がかかるなど、度々目標の変更を迫られた。

 しかし今年に入り、懸案だった富士五湖の文化財指定に必要な地権者同意も355件のうちほぼすべてを取得。国の文化審議会も富士講の水行場や芸術作品の対象となった富士五湖の文化財(名勝)指定を文部科学省に答申し、道が開けた。海外の専門家から指摘を受けていた北富士・東富士両演習場の保全策についても、自主的な保全管理区域に含めることで決着した。

 推薦書原案に記載された構成資産は、山梨、静岡両県にまたがる富士山域のほか、山梨県側16件、静岡県側8件の計25件。これらの構成資産を材料としながら、両県は推薦書原案の中で、富士山が「信仰の対象」「芸術の源泉」として現代に至るまで国内外に影響を与え続けてきた「世界の宝」である点を強調している。

 今後は、国の文化審議会や世界遺産条約関係省庁会議の検証を経た上で、ユネスコの世界遺産委員会に推薦書を提出するかが審議される。最短では、国が9月に推薦書の暫定版を出した上で、来年2月までに正式な推薦書をあらためて提出。同年には海外専門家による現地調査が行われ、2013年夏の世界遺産委員会で登録が実現する。
富士山世界文化遺産の構成資産
(1) 富士山域(山頂の信仰遺跡、大宮・村山口登山道、須山口登山道、須走口登山道、吉田口登山道、北口本宮冨士浅間神社、西湖、精進湖、本栖湖)=山梨、静岡両県
(2) 富士山本宮浅間大社=静岡県
(3) 山宮浅間神社=静岡県
(4) 村山浅間神社=静岡県
(5) 須山浅間神社=静岡県
(6) 冨士浅間神社=静岡県
(7) 河口浅間神社=山梨県
(8) 冨士御室浅間神社=山梨県
(9) 旧外川家住宅=山梨県
(10) 小佐野家住宅=山梨県
(11) 山中湖=山梨県
(12) 河口湖=山梨県
(13) 忍野八海・出口池=山梨県
(14) 忍野八海・お釜池=山梨県
(15) 忍野八海・底抜池=山梨県
(16) 忍野八海・銚子池=山梨県
(17) 忍野八海・湧池=山梨県
(18) 忍野八海・濁池=山梨県
(19) 忍野八海・鏡池=山梨県
(20) 忍野八海・菖蒲池=山梨県
(21) 船津胎内樹型=山梨県
(22) 吉田胎内樹型=山梨県
(23) 人穴富士講遺跡=静岡県
(24) 白糸の滝=静岡県
(25) 三保松原=静岡県
構成資産の一つ、北口本宮冨士浅間神社の参道=富士吉田市
構成資産の一つ、北口本宮冨士浅間神社の参道=富士吉田市
旧外川家住宅外観=富士吉田市
旧外川家住宅外観=富士吉田市
船津胎内樹型=富士河口湖町
船津胎内樹型=富士河口湖町
富士山世界遺産登録をめぐる動き
1993年5月 山梨、静岡両県の自然保護グループでつくる「富士山を世界遺産とする連絡協議会」が旧環境庁に富士山を世界自然遺産候補とするよう要望
2003年3月 世界自然遺産候補地として、国の検討会で富士山など17地域が浮上
5月 山梨、静岡両県が環境省などに富士山が最終候補地に選定されるよう求める要望書を提出
同月 国の検討会で富士山が世界自然遺産の候補から落選
2005年4月 政財界人らでつくるNPO法人「富士山を世界遺産にする国民会議」が世界文化遺産登録を目指して発足
12月 山梨、静岡両県が合同会議を立ち上げ、世界文化遺産登録に向けた活動を開始
2006年11月 山梨、静岡両県合同会議が富士山の世界遺産暫定リストへの追加を国に提案
2007年1月 富士山を世界遺産暫定リストに登載
2009年1月 構成資産候補の見直しなどにより、当初予定していた11年度の登録実現を断念
2010年7月 富士五湖の文化財指定作業が難航し、推薦書原案の提出時期を1年先送り
2011年2月 山梨県が富士五湖の「名勝」指定を文化庁に意見具申
5月 文化財審議会が文科相に対し、富士五湖を名勝に指定するよう答申
6月 富士山麓の北富士、東富士両演習場を保全管理区域とすることに地元が同意
7月22日 山梨、静岡両県の合同会議が、文化庁に提出する富士山の推薦書原案を了承
7月27日 文化庁に推薦書原案を提出

2011年8月5日付 山梨日日新聞掲載


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