世界遺産「富士山」へ プロジェクト始動
信仰、文化創造の源泉として
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 富士山文化遺産 資産を絞り込み
 富士山の世界文化遺産登録を目指す山梨、静岡両県は2009年、国連教育科学文化機関(ユネスコ)に提出する推薦書の原案作成と世界文化遺産「富士山」を構成する資産候補の確定作業を進める。両県は「火山という性質を根底に信仰の対象、文化創造の源泉となってきた」という観点から富士山の普遍的価値を証明していく方針。証明に必要な構成資産候補は「漏れのないように幅広く選んだ」(山梨県世界遺産推進課)ため、山梨県分だけで現在37物件に上る。今後は証明作業に必要かどうかを精査し、資産を絞り込んでいく。

普遍性を追究/推薦書原案作成へ

 山梨、静岡などで構成する富士山世界文化遺産登録推進両県合同会議が昨年11月、静岡県富士市で開いた初の国際シンポジウム。世界遺産の専門家クリスティーナ・カメロン氏とノーラ・ミッチェル氏が「富士山には日本の精神的、文化的伝統が表れている」と評価しながらアドバイスしたことで、09年の作業の進め方が固まった。

 世界遺産登録の審査にかかわってきた2人は、富士吉田市の御師の家「旧外川家住宅」で視察した富士講信者の祈とうや、富士山本宮浅間大社の曼荼羅(まんだら)図などを例に挙げ、信仰など文化的伝統の継承を証明する世界文化遺産登録基準の適用が可能との見方を提示。さらに葛飾北斎らの作品や紙幣に描かれた富士山景色の題材にもなっている点から、芸術作品などとの関連を表す基準のほか、「自然美という価値で証明する方法も考えられる」と指摘した。

 両県学術委員会は先月24日に開いた会議で、2人の意見を踏まえ、「信仰の対象」「文化創造の源泉」の影響という2本柱から推薦書原案を作成する方針を決定。一方で自然美の価値研究は当面見送ることにした。

 一方、価値証明の根拠として必要な構成資産候補は現在、山梨県で37物件、静岡県で25物件、両県共通で4物件が挙がっている。神社など建築物以外に風穴や氷穴、湖、河川、原始林、展望地など種類はさまざま。山梨県内は文化庁から候補に加える必要性を指摘されていた富士五湖すべての候補入りにめどがついたため、「ほぼ候補は出そろってきた」(県世界遺産推進課)という。

 一方で富士山の価値証明を進める方向性が決まってきたことに伴い、必ずしも証明作業に必要と言い切れない候補も見えてきた。県学術委員会は既にフジマリモ(山中湖)など4物件を候補から外す方針を決定。本年度中に「火山」「信仰の対象」「文化創造の源泉」という価値観に当てはまらない候補は外していく考えだ。

候補は山梨37件、静岡と共通4件 保存管理計画の策定急務

 世界遺産登録実現に向けては、推薦書作成などと同様に、構成資産候補の保存管理計画策定や国文化財指定作業が重要となってくる。山梨県が関係する構成資産候補は計41物件だが、作業はまだ始まったばかりだ。

 県世界遺産推進課によると、現時点で挙がっている構成資産候補は県単独で37物件、静岡県との共通で4物件。このうち既に保存管理計画が策定済みなのは富士山本体と山中のハリモミ純林、身延甲斐金山遺跡の3物件だが、「ハリモミ」「金山遺跡」は構成資産候補から外れる見通しとなっている。

 残る38物件の中でも、富士吉田市のレンゲツツジ・フジザクラ群落と山中湖村のフジマリモのように構成資産候補から外れ、保存管理計画策定が不必要となる見通しの物件もあり、現時点で策定が必要になりそうな物件は約30。このうち計画策定検討委員会を設置し、作業に着手しているのは富士河口湖町の6物件と富士吉田市の4物件、県の1物件の計11物件で、全体の35%程度にとどまっている。

 また構成資産候補とするため国文化財の指定を目指す物件では、北口本宮冨士浅間神社拝殿・幣殿と旧外川家住宅主屋などが近く文化庁の調査を受ける予定だが、河口浅間神社の本殿や七本杉、忍草富士浅間神社の本殿や棟札は国指定に相当するかどうか証明が難航している。御坂峠や三ツ峠山などの展望地も、歴史的背景や文学作品との関連性を精査する必要が出てきている。

 既に構成資産候補に含まれている山中湖や、今後候補入りする予定の河口湖や西湖、精進湖、本栖湖に関する保存管理計画策定や国文化財指定の作業もこれからだ。

 県世界遺産推進課の担当者は「構成資産候補が固まり切っていないため、作業が進めにくい側面もあるが、本年度末には方向性を示したい」としている。

2009年1月1日付 山梨日日新聞掲載


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