世界遺産「富士山」へ プロジェクト始動
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多様な視点で文化的価値訴え
富士山の世界遺産(文化遺産)登録を目指して開いたシンポジウム=東京・明治記念館
 富士山会議が開いたシンポジウムでは、同会議副理事長で大原美術館の高階秀爾館長、富士山本宮浅間大社の渡辺新宮司、久保田淳東大名誉教授、静岡県立美術館の山下善也主任学芸員、法政大の田中優子教授、京都造形芸術大の芳賀徹学長の6氏が富士山と信仰、文学、美術、江戸文化とのかかわり、外国人から見た富士山をテーマに講演。パネルディスカッションも行った。
 高階氏は「富士山の文化的価値を世界へ発信すると同時に、日本人にアピールする必要がある」と、富士山を見つめ直す必要性を指摘。渡辺氏は、紀元前から続いた富士山に対する信仰の歴史を解説し「江戸時代には8万人の富士講信者がいた」などと話した。
 久保田氏は、万葉集や新古今和歌集にうたわれた富士山の歌を紹介し「現在でも文学者の心を揺り動かし、芸術家の魂に働き掛ける存在」と位置付けた。美術の観点から講演した山下氏は「1000年にわたって愛され、数々の芸術家の題材になった」と述べ、文化的景観としての価値を訴えた。
 田中氏は「古来から富士山は人々の生活に結びついている。外国で富士山について語れば、日本全体を紹介することができる」と話し、系統立てた「富士山学」の発展を提唱。芳賀氏は、小泉八雲の著書などを例に挙げ、登録に向けて「『ザ・サミット・オブ・ザ・スピリット』(魂の頂上)をキャッチフレーズにしてはどうか」と呼び掛けた。
 シンポジウムは、同会議内に設置した文化遺産登録調査委員会の中間報告を兼ねて開かれ、パネルディスカッションでは「富士山を知り、日本の文化を再考する必要がある」との認識で一致した。

「日本元気にする契機に」 小田運営委員長
富士山の文化的価値についての講演に聞き入る参加者=東京・明治記念館
 世界遺産は、世界の貴重な財産を未来に残していこうと1972年に登録が始まり、現在は文化遺産と自然遺産を合わせて世界で約800件が登録されている。「富士山を世界遺産にする国民会議」の小田全宏運営委員長はシンポジウムに先立ってあいさつ。「富士山の世界遺産登録については約10年前に山梨、静岡両県民の署名活動などによって盛り上がったが、ごみ問題などで立ち消えとなった。富士山は日本人にとって心のふるさととしての自然遺産であるだけでなく大きな文化遺産だ」と強調するとともに、「今、富士山を見直そうという試みが始まった。この取り組みは日本を元気にするきっかけになる。富士山の文化的価値がいかに世界的な存在意義を持つか学び、運動を大きく広げていくため連携していこう」と呼び掛けた。

2005年7月28日付 山梨日日新聞掲載


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